リニアアンプ(三菱RD00HHS1) [リニアアンプ]
最近は高周波パワー系の半導体として入手できるものは数少なくなってきている。その昔は2SC799,2SC1306,2SC1307や2SC1969といったCBトランシーバー用として多くのトランジスタが出回っていたが、現在では製造中止となり入手不可能である。そこで最近ではIRF510等の高速スイッチング用FETを活用した製作例が多く見られる。これらは本来の目的ではないデバイスをアマチュアスピリットで活用している良い例であろう。その昔テレビの水平出力管(6DQ5,6DQ6等)を廃品回収会社(石川商店という我が家の近くの会社。現存している)のゴミの中から発掘し、分けてもらったのもその精神かも。特に東芝のトランス式テレビがお宝であった。また、電池管式ラジオも時々手に入った。
そんな中で比較的新しく現行品として三菱の高出力MOSFETシリーズがある。7.2V系と12.5V系でHFからUHF、数百mWから100Wまでと品種も多い。扱っている小売店もいくつかあり、アマチュア(個人)でも比較的入手可能である。
現在28MHz、50MHzの2バンドAM,FMトランシーバーの製作中であるが、そのファイナルの候補に予備実験をしてみた。
目標として0dBm入力でQRP33dbm(2W) 程度を目標としている。
100WタイプやUHF用としてはいくつかのアマチュア無線機に採用されているが小型のものは使用例が見当たらない。NETで探しても製作例は見当たらなかった。ということで、実験してみたのが以下のレポートである。
【ラインアップ】
代表的なラインアップとしては
HF帯 RD00HHS1(0.3W)→RD06HHF1(6W)→RD16HHF1(16W)→RD100HHF1(100W)
VHF帯 RD00HVS1(0.5W)→RD06HVF1(6W)→RD15HVF1(15W)→R70DHVF1(70W)
これ以外にUHF用等バリエーションは一通りそろっている。
【目標】
出力 :33dBm(2W)以上(このあと必要であればリニアアンプ)
電波形式:AM,FM
入 力:0dBm
以上のことからRD00HHS1(0.3W)→RD06HHF1(6W)で実験してみることとした。
【デバイス入手】
これらのFETは、ラジオハウスと樫木総業で入手 130円から350円程度と安価であった。
【実験】
今回はRD00HHS1(0.3W)の実験を行ってみた。
参考になる使用例が見つからないので、データシートから検討。
VDSS:30V ID:200mA Pout>0.3W Gp:19dB @Vdd=12.5V f=30MHz
S-PARAMETER @50MHz S11 (mag)1.005 (ang)-16.8
今回は実験であることと、HF帯(28MHz)からVHF帯(50MHz)なのであまりSパラを気にせず行った。(要するにSパラメーターは、よう解らん)
実験回路は入力側は、コンデンサーで直結。出力は4:1のインピーダンス変換で接続した。(回路図参照)Idq(バイアス電流)は、データシートを参考に50mAとした。ゲートには発振防止の抵抗(47Ω)。バイアス回路は広域から低域までのバイパスコンデンサーをつけてある。
実験として、入出力対比と周波数特性を見てみた。
入出力対比:SG(信号発生器)→DUT→アッテネータ→スペアナ
周波数特性:TG(スペアナ出力)→DUT→スペアナ入力
入出力特性はグラフの結果となった。(図参照)目的周波数において20dB以上の増幅度が得られ、出力24dBm辺りまでリニアに増幅している。。やはりFETは、すばらしい。トランジスタであれば10dBそこそこであろう。
周波数特性は、スペアナで100MHzと300MHzまで見てみた。(図参照)145MHzでも16.71dBあり、HF帯域では20-21dBmと結構フラットな特性が出ている。50MHz帯でも問題なく20dBを超えている。
今回出力側の4:1トロイダルコアにはラインノイズ用既製品コイルを使用している。バイファイラ巻き8ターンで1.9MHz等低域でも、問題なく20dBmを超えていた。汎用トロイダルコアならFT25-43、FT-37-43、FB801等で5t~8tでよいと思う。
この結果を見るとHF帯用のRD00HHS1でありながら、VHF帯まで十分使用可能と思われる。RD00HVS1なら145MHzでももっと稼げるはずである。
ならば、問題は無いのかと言えば、2つほど難点がある。1つは形状である。表面実装形ミニパワーモールドタイプ(SC-62?)の為ユニバーサル基板での実装が難しい。でも無理やり付けてみましたが。(写真参照) 2つ目は、無信号時(アイドリング)Idqが50mAである。13.8x0.05=0.69W(690mW) 0dBm入力20dBm(100mW)出力。かなり大喰らい。なのでアウトドアQRPに使用するにはエコではなくなる。300mW出力しても効率は50%行かない。触ってみると結構熱くなっている。一応10分程度送信試験をしてみたが、問題は無かった。参考にバイアス電流を変化させてみると20mA→10dB 30mA→18.2dB 40mA→20.40mA(@30MHz)であり、やはり50mAの時が一番効率が良い。
でも精神衛生上あまり良くない。出来れば専用プリント基板を作り使用したい。でも1品物ではエッチングも面倒。基板を作ってモジュール化し、汎用に使えるようにしてみようかな。
トランジスタであれば2段は必要と思われるから、アイドル電流が少々大きいが、使いやすいFETと言える。ドライバー段は、RD00HHS1で決まり。暇を見てRD00HVS1も実験してみよう。
次はファイナルRD06HHF1又はRD06HVF1を探ってみる。データシートを見るとアイドル電流500mAとなっている。これまた大喰らいだ。
リニアはRD100HHF1と行きたい所だがMRF255の死蔵品減らしを予定している。
今回はここまで。次回は何時になるやら。
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