MRF255その2 [リニアアンプ]
前回の狭帯域アンプに続き、MRF255を1個使用し広帯域リニアアンプを実験してみた。
MRF255の入力インピーダンスはデータシートのSパラメータから判断すると6.5Ω(at54MHz)程度とかなり低いため、取りあえず4:1の準伝送路トランスで低下させ10Ω(1W)抵抗でターミネートし直流カットコンデンサー(0.0033uF2個パラ)を経由しゲートに接続。この時入力容量140pFなのでコーナー周波数は1/(2πCR)=113.68MHzと計算される。
バイアスは、単に2.2KΩの抵抗と1.5KΩの抵抗で分圧しゲートに注入。
ID=400mAになるようにボリュームを調整する。実験では直接安定化電源を接続し、実験を行った。
出力回路は、50W出力と仮定するとRL=(VCC-Vsat)^2/2PO=(13.8-0.4)^2/2*50=1.79Ωとかなり低くなる。 電源電圧が低いから致し方ない。このため50Ωにするためにトランスで昇圧することになる。使用したトランスはCB無線用リニアのジャンク品を使用した。巻数比は1:4(インピーダンス比1:16)である。3.125Ω:50Ωとまだミスマッチである。逆算するとPO=28.7Wとなる。出力トランスには、周波数補正用にコンデンサーを付けている。またドレイン-アース間にも調整用に付けている。これらについてはトランスの特性によりCUT&TRYで決める必要がある。製作例などを参考にTRYし、今回は470pFと180pFとなった。
結果としては3.5MHz-28MHzまで1W入力で45W出力となった。(21MHzは少し下がる)
目標として50MHzを目指し思考錯誤してみたが、FETを2個消耗する羽目となった。
このトランスでは、無理と判断。CB用で得体が知れないこと、またコイルも結合が弱いのかも知れない。どちらにしてもミスマッチが原因と思われる。時として異常発振の可能性がある。試験を行う際には、かなり小さい信号(0dBm→10dbm→20dBm)と順に入力し、いくらか増幅していることを確認していき、最後に1W入力する等しないと、間違いなくFETが衝天する。電源もある程度電流制限していてもアッと言う間にダウン。このあたりはトランジスタより扱いにくい。狭帯域アンプの時は、特段問題が無かったのに。1個800円とはいえ痛い。
今回の実験をまとめてみる。
1) 入力回路は、準伝送路トランスでも、メガネトランスでもHF帯においては、問題ない。50MHzにおいては、不明
2) 出力回路は、メガネトランスの場合HFでは問題ないが、50MHzでは要注意。結合を深めるために同軸等を使用するか、伝送路型トランスにすべきかもしれない。
3) コンデンサーは、極力高周波特性、温度特性の良いものを使う。(ディップドマイカ、チップ等)
4) 調整には、極力小さい入力からスタートし、増幅作用を確認しながら実験を行う。増幅率が低い場合には決して大入力しない。間違いなく破壊される。
5) ダミー抵抗等しっかりした負荷で実験を行う。間違ってもオープン状態で入力しないこと。
今回リニアを製作するときの環境を構築する必要性を痛切に感じた。
エキサイターとしてトランシーバーと標準信号発生器(以下SG)を使用したが、トランシーバーでは1W出力に調整するのが手間である。所有しているSGでは+20dBm(0.01W)がMAX。できれば、0dBm~10W位のパワーSGがあると試験がスムーズである。またオーバーパワーのミスも少なくなる。
また、出力測定も結構難しい。アマチュア無線用パワー計は、結構いい加減である。バードのパワー計が入出力2台ほしくなる。(バードが言われるように正確ならば)
出力には高調波も含んでおり、正確な出力測定をするために目的周波数用のローパスフィルタを入れる必要がある。
出力を見るために方向性結合器とスペクトラムアナライザーをセットしておきたい。
また、トランスについての情報が少ない。以前故田縁OM(JA6BI)がHJに書かれた記事や山村氏の「トロイダル・コア活用百科」が参考になると思う。今回の実験を踏まえ今後の計画としては、トランスを入手しやすいコアを使ってシングルアンプを完成させる。続いてプシュプル100Wを目指す。
参考までにFT-920のファイナルの写真を載せておく。トランジスタリニアに比べると実にシンプルである。これを見てもFETが高周波アンプに適していることがわかる。問題は高性能のトランス製作が鍵となる。また、トランス巻き線も同軸がよさそう。入手しやすい部品を使用してこのあたりの実験を行ってみたいが、FETをかなり消耗しそうである。どなたか実験しませんか?
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